2007年3月3日(土) くもり/晴れ
地元
友人が来るまでの間、ビールを呑んで待っている。
川原の土手に寝そべって、文庫本を開いた。午前中、空を覆っていた雲は、午後にはほとんどなくなっていた。日差しが暖かい。ビールの缶が温まらないように、自分の身体の影に置く。時折風が吹く。整地され、芝が植えられた川原では、四人の青年がキャッチボールをしている。近くで、女の子が一人、しゃがみこんで泣き出す。他の三人の女の子を責めているようでもあり、同情を誘っているようでもある。背後を、散歩中の犬が通る。物欲しそうな鳩が寄ってくる。泣いていた女の子は、結局母親に叱られ、連れて行かれた。顔の横に足が立つ。「自由だねー」の声と共に、友人が来る。 きのこを食べると大きくなる。草花を食べると火を吐く。星を取ると無敵になる。そういう設定のゲームについて、話しをした。 ビールが進む、午後の川原だ。 2007年3月5日(月) 晴れ 帰り着いて
あんなにも小西真奈美について熱く語っている人物を、これまで見たことがない。初めて見る、友人の姿だ。
夜の十時に呼び出され、酒場に向かった。扉を開けて目に飛び込んできたのは、焼酎の瓶を真ん中に待っている、友人二人の姿だった。夕方五時から呑んでいるらしい。底なし沼に足を突っ込んでしまったような心境だ。 笑顔がいいのだと友は言う。否定はしまい。むしろ大いに賛同するところだ。だがその前に、呂律が回っていないことをまず問題にするべきではないか。そう思ったが、言わないでおく。 熱い語りは続く。写真集は素晴らしく、ナースではなく研修医で、そして太陽は東から昇る。そのままの勢いでカラオケに突入した。 一つ、書き残しておきたい。確かに小西真奈美は可愛い。だが、今日の店員さんも相当可愛いかった。死ぬまで忘れないでおこうと思う。 2007年3月8日(木) 晴れ 開眼
ハンガリーに留学している友人の、ブログを読む。落ち込む。
友人はハンガリー語の授業を受けている。クラスには、アメリカ、ドイツ、中国、日本等々、各国からの猛者共が寄り集まり、なかなか壮観だ。議論をし、同じ釜の飯を食い、夜は呑み屋に繰り出して語り明かす。ハンガリー語の他にも英語ドイツ語その他を駆使し、国際情勢や、各国文化や、民族性の違いなんかについて語っちゃったりしている。小西真奈美について二時間語っている場合じゃないだろうお前、と言いたい。 そう、そうだ。この文章を書いているお前のことだ。 この友人とは同年齢だ。全く困ったもので、生まれてこの方同じ時間を過ごしてきたとは思えないような違いになっている。しばし、一体何に時間を費やしてきたのかと考えた。 「ぷよぷよ」だったら絶対に負けないという自信はある。 2007年3月9日(金) 晴れ 呑む前
油揚げの余分な油を流すため、薬缶を火にかけた。水が沸騰するまでの間、洗い物をする。皿を洗い流していてギョっとした。排水口から目玉が覗いている。
排水口には、ゴミ取り用にゴム製の蓋がはまっている。真ん中に小さな穴が開いていて、そこから放射状に切れ込みが入っている。目玉はその中央の穴から、こちらを見据えていた。水流に打たれ、目玉は一瞬で消えた。後には黒々とした、下水へ通じる穴だけが残る。 もちろん、気のせいだ。油膜が隙間に張っていて、そこに頭上の蛍光灯の光が映りこんだだけだ。ぬめりとした粘膜質の輝きも、こちらを向くギョロリとした動きも、全てそれで説明がつく。 玉葱と油揚げを、出汁醤油で煮込む。白飯の上にかけると「油揚げ丼」だ。途中、何度も腕が流し台の上を横切る。排水口に別段変わったところはなく、黒々とした穴に水を呑み込み続けている。 2007年3月10日(土) 晴れ 祝、無事帰国
くくるはご免だ。くくるのも、くくられるのもなるべくなら避けたい。しかし気が付けばくくってしまっている自分がいて、厄介だ。
今日、走りながら思った。「動作とは一連だ」。今振り返れば、だから何だと言いたいくくり方だ。だが、運動中でハイになっている頭には、素晴らしい閃きのように思えた。「そうだ、動作とは常に一連なんだ。始めから終わりまでで、セットだ。飛んでいる矢は突き刺さるんだ。嗚呼、嗚呼、なんてすごい考えだ」本気でそう思っていた。当たり前だ。 「お前はロリコンだから」逆にそうくくられたこともある。馬鹿な。そんなくくりで掴めるほど、狭くはない。何がだ。どうせくくるなら、できるだけ大きいものにしてもらいたい。「やっぱり愛だな」これ位大きければ、納得だろう。 「まぁ、お前はあれだからなぁ」かといってここまで大きくくくられると、もっと嫌なのだった。くくりの奥は深い。 2007年3月12日(月) 晴れ 球、翌日
鳥も、やるな。差し出された「修理確認書」を見て、そう思う。
二日ほど前から、インターネットに接続が出来なくなっていた。サポートセンターに電話をする。指示通りエラー番号を調べ、中継器の電源を点け直すが、直らない。どうもどこかで断線しているらしい。業者の方に来てもらうことになった。 やって来たのは若い男だ。仕事は的確で、回線の先にギターチューナーのお化けのような機械を接続し、携帯電話で連絡を取りながら、信号が送受信できるかどうかを調べ始めた。十五分後には、修理は完了していた。 「じゃ、こちらにサインをお願いします」そう言って男は、一枚の書類を取り出した。名前を書こうとして気が付く。原因という欄に、「鳥害」と書いてある。 なかなかテロルな鳥もいたものである。インフラを攻めるとは、目の付け所が違う。 頼もしく感じ、笑う。 2007年3月13日(火) 晴れ 四キロ
「もうよろしいでしょうか、刑事さん」
祥子は立ち上がり、ドアの方へ向き直った。 「すみません、お時間を取らせてしまって。あ、最後に一つだけよろしいですか?祥子さん、お米を炊く前に三十分程水に浸けておくとおいしく炊けるって、ご存知ですか?」 「いいえ?私仕事が忙しくて、家事は全くやらないんです。それがどうしたんですか?」 「いえ、亡くなられた瞳さんの部屋の炊飯器にですね、お米が入っていたんです、水と一緒に。つまりですね、瞳さんはお米を炊くつもりだったのか炊くのを忘れていた!自殺しようとする人がご飯を炊くわけがないから、炊き忘れたのでしょう。しかしですね、洗濯物にアイロンまでかけ、最後の晩餐に奮発して焼肉を食べたその後にファ○リーズして臭いを消す程神経質だった瞳さんが、ご飯を炊くのを忘れるなんてことがありますかね。どうも、その点だけがひっかかりまして・・・」 と、脳内劇場が止まらないまま飯を炊く。 2007年3月14日(水) 晴れ 十枚
良く寝ると、心が動く。いや、素面で書いてますよ、ほんとに。
毎日走っている距離を、三キロから四キロに変えた。友人に対する見栄だ。「毎日走ってるんだぜぇ」と友人に話したところ、「三キロ?ふふーん」と言われた。ちくしょう、一キロ増やしてやる。そう思った。 酒の席での話しだったので、翌日の一キロ増しはつらかった。睡眠時間は五時間だ。 で、今日は十時間で挑んだ。肉体的な辛さは変わらないが、精神的疲労がまるで違う。走るコースを変えたのだが、昨日は見る余裕もなかった道端に、花の群生地なども発見する。おまけに、その花の名前を調べるなどということまでしてしまう。スミレだった。乙女だった。ふっふっふ。もう「ふふーん」とは言わせない。 これからはもっと「寝る」ことを大切にしていこうと思う。「寝る」ためになら、寝る間も惜しもう。そう思う。はい。酔ってます。 2007年3月16日(金) 晴れ パンクをしたなら、リムジンを呼べばいいじゃない
ものの名前を覚えない男、見参だ。
阿呆仲間六人で集まる。中学時代からの付き合いだが、よくもまぁみんな飽きもせず集まるものだ。予想通り、決めた時間の三十分後に集合が完了する。いつものことだ。 そこからやっと店を決める。いつものことだ。「前回の沖縄料理屋はどうか」という意見が、グルメなMに「不味い」と却下される。で、別の店を提案しようとして、言葉に詰まった。Mお気に入りの店でそこなら文句もなかろうと思ったが、名前が思い浮かばない。 端から名前を覚える気がないのが、問題だ。「覚えていたのに忘れてしまった」は悔しさが次回へのばねになる。だが、固有名詞を覚えようとしない己の性癖は、自覚がない分性質が悪い。あかんではないか。 しょうがないので、何とか搾り出し言葉が「ほら、うどん屋」だった。酒も呑めるうどん屋なのだが、Mを除く全員がポカーンとなる。いつものことだ。 2007年3月18日(日) 晴れ 備え
美容院に行って満足している。なんと、ちゃんと髪まで切ってあるから嬉しい限りだ。
ここ二年程、髪を切るのに近所の美容院を利用している。だが実は、満足に行けた例がなかった。 財布を忘れる。財布を持ってきてもお金がない。途中の商店街で安売りに引っかかり、気が付けば閉店時間を過ぎていたりなどする。着けば着いたで、髪型の注文が苦手だから困る。「短くしてぇ」としか思っていない。間抜け極まりない。 しかし今回は、全てがすんなりと運んだ。ちゃんと事前にお金を下ろし、一直線に美容院に向かう。「ヴぇりーしょーとで」と、普段は全く使わないワードも、口から飛び出るというものだ。おかげでおねぇさんとのトークも弾んだ。失業保険について熱く語る。店中どん引きだ。満足して店を出た。 「物事とはこうありたいものだね、ワトソン君」そふともひかんな頭を撫でつつ、思う。 2007年3月20日(火) 晴れ のびのびと
洗濯物をしようとして気が付く。ズボンのケツに、穴が開いていた。
このケツでどこに行ったかを思い浮かべてみる。まずこ洒落たうどん屋風居酒屋(居酒屋風うどん屋?)で、酒を呑んでいる。納豆入りうどんを啜りつつ、ケツには穴だ。 次に行ったのはカラオケだ。朝まで歌っていたわけだが、「路地裏の窓や向かいのホームに君の姿を探している」場合ではないだろうと言いたい。 翌日は母と、姉と、姉の娘(一歳六ヶ月)と家具屋に行っている。歩き始めてまだ間もない姪は、興奮して走り回る。「こらこら、そんなに走っちゃいけないよ」などと言いつつ後を付いていくわけだが、そんな男のケツには穴だ。家族連れで賑わう大型家具店で、笑顔の客が絶えなかったのは何故だ。 ぽっかり開いた穴を目の前にかざし、「まぁいいさ、減るものではない」と呟く。ケツに穴はつきものだ。その終わり方はどうだ。 2007年3月21日(水) 晴れ やるな(元ネタの分からない方には、申し訳ない)
とあるお店で、某アニメスタジオのキャラクターグッズが並べられている棚を見ていた時のことだ。
場所を取らずに園芸ができることが売りの商品群があった。黒猫が寄り添っている籐籠から花が生えたり、多分まだ日本にいるへんな生きものが曳いている台車から、小さな観葉植物が生えてくるといった趣向だ。いずれもサイズが手の平に乗る程度で、可愛い。 だが中に一つだけ、異様なものがある。団子虫に似ている、あいつだ。 本来アニメの中では巨大だったその蟲が、手の平サイズに縮小されていた。お化け団子虫といった印象だ。どうやら、その団子虫の体内から草花が生えるらしい。怖い。 冬虫夏草を思い起こさせるような、生理的嫌悪感がまずある。何よりアニメの中の少女は、そういった事態を避ける為に奮闘していたはずだ。「いいのか、それは」と呟く。 明日絶対買ってこようと思う。 2007年3月22日(木) 晴れ 徘徊、中止呑み
大三元を上がり損ねた。しかも無理に突っ張ったおかげで、跳ね満に振り込んでいる。一番悪いパターンだ。その頃から、歌い狂い始める。
ラブサイケデリコがいけない。君がアタシに乗るHard days♪って、何だ。心底、重そうだ。以前ハードディスクの中に取り込んでおいたのだが、久しぶりに聴いてびっくりする。すごい歌詞だ。惚れてしまった。 ネット麻雀の鬱屈で歌っていたのだが、反動で止まらなくなる。楽しい。「ふれーみん、さんかんすぅあっぺなすてっまいしゅー♪」と呪文のように呟きながら、そのままの勢いで夕飯の支度に取り掛かった。「運命線からあざぅぇい、れいている夢とはあにぅぇい♪」と、湯を沸かしスパゲッティを茹でる。スパゲッティの茹で時間は十分だ。後二曲はいける。 多分一番迷惑しているのは、隣の部屋の人だと思う。すまない気持ちを歌に乗せる。 2007年3月23日(金) 晴れ 食い過ぎだ
酔った頭で思うのだ。何故酔うと、食欲に歯止めが掛からない。
夜道を辿りながら思うのだ。以前もそのことで論議した。 あれは一週間ほど前だった。呑みの席でのことだった。その時出た意見は二つ、「呑んでる時間は長いから、その間に消化されるのさ」というものと、「アルコールで脳が麻痺するんだ」というものだ。 終夜営業の、蕎麦屋の暖簾をくぐりながら思うのだ。だけど時々人は言う。ゆっくり物を食べなさい。ゆっくり食べれば満腹感が得られるよ、太らないよと人は言う。 冷やしたぬきを注文しつつ思うのだ。だからやっぱり食欲が、止まらないのは酒精のせいだ。アルコールで前頭葉が麻痺しているんだ。冷やしたぬきを啜りつつ、そう思う。 蕎麦屋を出た向かいのコンビニで買った、おにぎりを片手に思うのだ。何故酔うと、食欲に歯止めが掛からない。 2007年3月24日(土) くもり/雨 チャリ部
ボーリング場の片隅で、アイスの棒二本を持って立っている。
久しぶりにやったボーリングだったが、結果はやはり芳しくなかった。接戦の末、最後のフレームで逆転負けを喫する。 近くにアイスの自動販売機があり、罰ゲームはアイス二本の一気食いということになっていた。指定されたチョコミントとチーズケーキ味を買う。食べ合わせは、あまりよろしくない。 しかし考えてみれば、子供の時分などアイスを二本も同時に食べるなんて、したくても出来なかった事だ。ましてそれが罰ゲームになるなど、想像の遥か彼方だ。大人になったな。そう思う。ゴトンと音がして、アイスが吐き出される。 席まで戻ると、友人二人は隣のレーンの投球に見入っていた。声をかけるタイミングを何となく逸し、両手に一本ずつアイスをぶら下げたまま、ぽつねんと佇む。 2007年3月25日(日) 雨/くもり 中島らも先生、すみませぬ。
夕方、友人から電話が入る。呑みの誘いだ。いそいそと支度をしながらも、「明日もあるし、あんまりメートルを上げないようにしなきゃな」という言葉が浮かんできた。自分の心から浮かんだ言葉ながら、これは何だ。
夢野久作著「ドグラマグラ」がいけない。「今日は吾輩閑散だからね。少々メートルを上げるかもしれないよ」という記述が出てくる。いわゆる「テンションを上げる」に相当する言葉として、昔は「メートルを上げる」が使われれていたことは、知識として知っていたが、実際の使用例を見るのは初めてだった。知った言葉を使ってみたくなるという、己の阿呆根性に参る。あかんではないか。 まず、メートルって何だと問いたい。高飛びの大会か、と言いたい気持ちで一杯だ。しかもそういう問い自体ナンセンスなのであって、じゃぁ、「尻子玉を抜かれる」の尻子玉って何だ、「小股が切れ上がった女」って何だ。いいから早く酒呑んで寝ろ。 2007年3月27日(火) くもり おっしゃ
はっきり力と名付けたい力がある。心底好きな力であって、誤解を恐れずに言えば、目標としたい力だ。
インターネットのサイトに、コピーライター糸井重里が主催する「ほぼ日刊イトイ新聞」というものがあり、そのコンテンツの一つに、オリジナルラブの田島貴男が出てくる。この人のはっきり力がすごい。最近何か行き詰まりがあると、前述のページを眺めることが多く、格好良くはないが、事実だ。 まぁ、実際のページを見て頂くのが一番だとは分かっているが、紹介する。番長(ページ内では、こう呼ばれている)は、滝つぼの真似をする。あの、水が流れてきて上から落ち淵となっている、滝つぼのことだ。何てはっきりした人なんだと思う。人がどう思おうが知ったことか。いやそんな瑣末なことなど、考えてもいまい。したいからするだけなのだろう。滝つぼの真似だ。 阿呆でも、いいじゃないか。 2007年3月29日(木) 晴れ 最後まで
地図には名前が書いてあった。あらゆる川、あらゆる山、あらゆる集落に名前が書いてある。川の真ん中で、圧倒される。
五万分の一の地形図というものがある。発行は国土地理院だ。等高線や、だいたいの土地状況等が記されていて、山登りや川下りの時に重宝する。 今年初めての川下りの折も、いつも通りお世話になりっ放しだった。赤塚を通ったから現在地はここ、後五キロ位で佐野の送電線で、今十五時過ぎだから今日はだいたい千歳橋まで・・・・・・とやっていてふと気付く。ずい分小さな流れ込みにまで、名前が書いてある。 そう思った途端、地図上は名前だらけになっていた。どんな所にも名前がある。名前が付いていない所を探す方が難しい。というより、名前のない所はない。 「国土地理院すげー」という叫びが、川面に響く。応えるのは、鶯の鳴き声ばかりの春の川面だ。 2007年3月30日(金) 雨/晴れ 行く川の流れは絶えずして
今年初めての川下りを終えて頭から離れないのは、テトラポッド下の夥しい小魚達だ。
一日を漕ぎ終えて川から上がった。道路に向かう途中テトラポッドを飛び越えていると、水中に魚の影が翻る。足を止めたその足元に、うじゃうじゃと小魚が群れている。 夕暮れになって大量に発生した羽虫を食べているのだと推測した。耳元でブンブン音がする、その位羽虫が飛び回っているからだ。 つまり奴ら小魚共は、何かの拍子で川に落ちたり、力尽きたりする羽虫を食べようと、その下で待っているのではなかろうか。うじゃうじゃうじゃと待っている。 もう何と言うか、おひゃーという気持ちだった。朝に死に夕に生るるその下に魚だ。羽虫の命の無常さもさることながら、小魚達の浅ましさ兼たくましさに感服する。しかし数の多さが正直気持ち悪い。 しょうがないのでとりあえずテントに戻り、薄塩のポテチと共にビールを呑みました。 2007年3月31日(土) くもり あかんではないか
花見をしたのだが、その記憶がない。
当日の午前中まで旅行に行っていた友人がいて、土産が芋焼酎だった。どうも原因は、それのようだ。桜の下、味見がてら烏龍茶で割って回し呑みをする。まぁ、奥床しい人達ばかりだから、当然杯の底に多少酒が残る。その悉くを呑んでいた。そこから先の記憶がない。また、やっちまったかと思う。 一塊の印象として、『楽しかった』という気持ちだけあるのが悔しい。一応幹事を務めており、「夜は呑み屋で二次会」という段取りも無難にこなしていたようだから、変なことはしていまいと信じている。だがだからこそ、その楽しかった会の詳細が分からないというのは、非常に損した気分だ。次に鮮明な記憶として残っているのは、駅の改札口で女の子達が手を振りながら帰って行く場面で、いい所全部がすっ飛んでいる。マジかよ。 微かに、日本代表のオシム監督が同席していたように思う。思い出は、大事にしたい。 |