2007年4月3日(火) 雨/晴れ
地下街にて
食材を串に刺し、衣を付けて揚げる。熱々のそれをたっぷりのソースにザブンと浸し、食べる。片手にはビールだ。至福だ。何の話しかと言えば、『串カツ』のことだ。前から疑問に思っていたのは、この串カツを出すお店に書いてある『ソースの二度漬けはご遠慮下さい』の文句だった。これは一体どういう意味なのか。疑惑を解明すべく、特派員はさっそく現地に飛んだ。俺の事だ。
ずっと『もったいないから』だとばかり思っていた。しかしそんなケチ臭いことを、どの店もわざわざ書くのだろうか。現場を何軒も回っている内に、この疑問は氷解した。「ソースの二度漬け禁止」それを全ての店が掲げるのはずばり、喰いかけのものをまたソースに漬けたら汚いからだ。ある店の「足りない方は、卓上の容器に入っているソースをお使い下さい」の注意書きを見て、悟る。
現地に飛ぶ前に、二秒考えれば分かりそうなものだ。気付けば取材費が、すごい。
2007年4月4日(水) 雨/くもり晴れ
テーマ変更。『打倒クラムボン』
まずずるいのは、天候を操ることだ。そんなことをされたら、勝てるわけがない。
野外のライブ会場は、雨だった。開演直後は晴れていたものの、一組目の演者が終わる頃に曇り始め、三組目の時にはすでに豪雨だ。雷が鳴り、突風が吹く。すわ、これはもう中止かと思った矢先、奴らが登場する直前に、突然空が晴れ渡った。そんな演出をされたら、感動するなと言う方が無理だ。なんてずるい奴らだ。そして演奏が始まる。
これがまた卑怯極まりない。
声、ピアノ、ベース、ドラムという、たった四つの音しか出していない癖に、こんなに腰を振らせるとは何事か。これではまるで、ノリノリに乗っている人ではないか。
ライブ会場を後にする時に感じていたのは、屈辱感だった。分かった今は認めよう。確かに今日は感動しっ放しだった。だが待ってろよ。そう思う。いつかお前らに勝ってやるぞ。春の日、決心する。阿呆だ。
2007年4月5日(木) 晴れ
うぇるかむ
ま、自慢じゃないけど、最近もてる。全く、困ったものだ。
例えば今日だ。今日は女の子の部屋に招待された。二人っ切りだ。一応『引越して来たばかりで、家具が一人じゃ組み立てられないから組み立てて』なんて名目があったけど、もちろんそれは名目だけだ。夕方五時から夕食を挟んで六時間、夜中の十一時までみっちり『家具作り』という名の愛を交換してしまった。
何? 『お前、それは全く相手にされていない上に、体よく使われているだけじゃねーか』だって? おいおい、そういうジェラシーは醜いぜ。だって彼女は「日本の彼氏はとっても優しいんだけど、スイス人からも告白されて困ってるんだよね。ねぇ、どうしたらいいと思う?」なんて愛の言葉を、こっちが必死でネジを回している耳元で囁いてくれるんだぜ。可愛い子猫ちゃんだ。
そんなの知るかと言いたい気持ちで一杯だ。
2007年4月6日(金) 晴れ
久しぶりにいつものコースを走ると、道の端が黄色い。たんぽぽが咲いていた。ランニングを始めたのは昨年の十二月で、当然見るのは初めてだ。お前ら、たんぽぽだったのかと驚愕する。しかし良く見ると、密集の度合いが凄い。何というか、相当黄色だ。『たんぽぽ地獄』といった様相で、ちょっと怖い。
さらに走り、今度は桜並木に突入する。すでに葉桜になりかけているが、それでも一面桃色だ。散り際でもあって、ひらひらと、いくつもの花びらが舞っている。その中を、こちらに向かって走ってくるジャージ姿の女がいる。と、突然足を止めた女が、踊り始めた。そのまま段々と天に向かって登っていく。登るにつれ、若返っていくのが印象的だ。桜の枝葉を抜け、ちょうど女の姿が見えなくなった瞬間、「ぎゃー!」という叫びが聞こえ、やがて大量の桜花びらが、天空から舞い落ちてくる。後に残るのは、静寂だけだ。
いやー。ランニングハイは、楽しい。
2007年4月7日(土) 晴れ/雨
満腹
午後四時にバッティングセンター集合だった。三人とも自転車でだ。全体的に散りばめられた、この懐かしワード達は、何だ。
中学時代の野郎共三人が、たまたま最近、自転車に乗っているということが発覚した。五月の連休辺りに、ツーリングに行こうかという話しになっている。
作戦会議のため集まることにしたが、ラーメンが食べたい、それならうまいと聞くあそこだ、ついでに近くのバッティングセンターで腹を空かせて・・・・・・とやっている内に、上記のようなことになっていた。中学生の頃と、やっていることが同じだ。成長率ゼロだ。
いや、変わった部分ももちろんある。
ラーメン屋の開店時間は、思ったより遅かった。暇潰しに、ビールを買って公園でミニ花見をする。中学生で、飲酒は出来まい。
うひゃうひゃやっていると、近くでサッカーをしていた子供達がさり気なく帰っていく。成長率は、マイナスじゃないか。
2007年4月8日(日) 晴れ/くもり
眠姪
夜が深い。空には薄く雲が広がり、星も月も見えなかった。大きな幹線道路へと続く住宅街の裏道に、人影はない。低気圧が運んできた湿気を感じつつ、大きく息を吸い込んでペダルを踏んだ。
真夜中、自転車を走らせるのは好きだ。沈殿した闇がそこここにうずくまり、街灯の明かりは、わずかにその周囲を照らすだけで、頼りない。人っ子一人いない道を漕いでいると、まるで海中に没した古代の都市を走っているかのように感じられる瞬間がある。遠い昔の人達が残した、かつての文明の栄華の残骸だ。抜け殻だけを残して、一体彼らは、何処にいってしまったのだろうか。
ってさぁ、人が気分出して走っている時にさぁ、たまの奴がさぁ、「自殺者のぉ身体じゅぅう、でんでん虫這うよ、おやすみいのししぃーー♪」って歌うわけですよ、イヤホンから、耳元で。それは一体どんな歌詞だ。
もー、たま、大好きだ。
2007年4月9日(月) くもり/雨
春の天気は変わりやすし
自転車で走っている時はだいたい、音楽を聴いている。
最近の携帯デジタルオーディオプレイヤーは素晴らしく、自分が持っているCDのほとんど全部を常に持ち歩けるわけで、嬉しい限りだ。走行中はシャッフルモードでかけ流しをしている。
ところが不思議なことに、ある場所を通る時に必ず同じ曲がかかることを、最近発見した。そう頻繁に通る場所ではないので、まぁ偶然ではあるが、それにしても記憶に残るだけでも過去三回は同じ曲だ。千五百曲近い曲数がランダムでかかっていることを考えると、いわゆる天文学的に希少な確率になるのではなかろうか。
ちなみに、かかる曲名はビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド」だ。個人的にその場所は、『幻覚通り』と呼ぶことにしている。るーしーいんざすかーい、うぃずだーいなもん♪
2007年4月10日(火) 晴れ
原動力
雑事にかまける。
サイン一つが足りなかったため無効な書類があった。サインをもらうためだけに、最寄路線の終着駅まで向かう。着いて五分で用件は済んだ。往復にかかった時間は二時間だ。
次に、約束の時間に遅れそうだったため後回しにしていた振込みをしに、郵便局に向かった。ところが、郵便局の金融業務は午後四時までらしい。到着時刻は、四時十五分だ。
別に誰が悪いわけではない。強いて言えば、調べていない自分が悪い。しかし、まぁ「ムキー!」となる。
しょうがないので、「車の通行量は多いが人通りがあまりない夜道で歌う」という、暴挙に出る。ストレスが溜まった時に時々やるが、楽しい。特に歩道橋の上でやると、「俺・オン・ステージ」だ。
どこかの歩道橋で、「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド」が聞こえてきても、そっとしておいて欲しい。
2007年4月11日(水) くもり/雨
メイド・菓子
以前読んだ本の中に、腸内菌戦争について書いてあるものがあった。古い考えで、そう単純ではないらしいが、面白い。
我々の腸内には常時相当数の菌がいるが、健常時には、ビフィズス菌に代表される良性の菌が多勢を占めているらしい。ところが何らかの理由で悪性の菌が増えると、いわゆる腹痛が起こり、お腹が下る。その他に、日和見菌というものが居て、こいつらは普段無害なのだが、一旦形勢が悪性菌に傾くと、途端に悪さをし始めらるしい。酷い奴らだ。
「裏切ったなぁ、大腸菌どもめ!」「ふふふ、所詮この世は弱肉強食。強いものにつくのが世の習いよ。あばよ、ビフィズス。せいぜい頑張ることだ。貴様の骨は拾ってやるよ。排○されなければなぁ!わははは」「くそぉ、何て奴だ。だが、我々にはまだこれがある!」「何?そ、それはもしや、『飲むヨーグルト(プロバイオティクス)』!!」
はっ!夢か!早く、治らないかな。
2007年4月13日(金) 晴れ
お久しぶりに
止まぬ腹痛を抱えつつ、呑み屋まで赴いた。例え血反吐を吐こうとも、そこにお酒がある限りだ。しかしやっぱりというか、予想通りというか、碌なことにはならなかった。
トイレに立つこと数回、他人に聞こえる程お腹が鳴ること十数回、集中力の大半は自分の腹具合に傾けられ、楽しめないことこの上ない。
トイレに腰掛けつつ、悪玉菌を叱った。「全くお前ら、よりによって呑みの日に繁殖するとはふてー奴らだ。一体誰の腹で育ってると思ってるんだ。それを恩を仇で返すような真似しやがって。お前らこの会が終わったらなぁ、ヨーグルト食いまくってやるから、覚えとけ!」太鼓腹をぴしゃぴしゃ叩きつつ、こんこんと説教だ。個室からこんな声が聞こえてくるトイレがあったら、まぁ自分なら逃げる。腹痛の酔っ払いは、性質が悪い。
家に帰って眠る。汗まみれで目を覚ますと、腹の痛みは去っていた。
2007年4月14日(土) 晴れ
養生
腹痛がぶり返し、寝床の中で一日を過ごす。悪玉菌を呪いつつ、開高健を読んでいる。
開高健が好きなのは、ダンドンからモックバイまで、ベトナムを縦断した経験のせいもある。氏の文章に出てくるベトナムは戦時下のそれだ。にも関わらず、そこに出てくる人々や情景は、確かに記憶と一致する。
中国からベトナムへ入るイミグレーションには一人の男がいた。ハノイまでのタクシーの客引きだ。七人の侍の三船のようなヒゲ面と粗野な動作で、しつこく付きまとってくる。
男がふっかけてきた値段は法外なものだったが、タクシーはそれしかないようだった。覚悟を決めて歩くそぶりを見せると、途端に値段は暴落した。慌てぶりが、可愛い程だ。しかしやはり抜け目なく、結局四人乗りのセダンに、六人が押し込まれての出発だった。
活力がありしたたかで、そこを行く自分は常にどこか緊張があったが、楽しかった。あれは良かった。腹は痛むが、あれは良かった。
2007年4月16日(月) 雨
馴染み呑み
最近「勝ち」がない。「勝ち」はやっぱり欲しい。しかし「勝ち」は疲れる。問題はそこだ。
「ふんぬー!」と思わず声に出してしまった。一人、部屋の中でだ。時刻は深夜零時を回っている。しかし声も出ようというものだ。何故なら、上がれないからだ。
ネット麻雀をやっていたのだった。
物凄く負けが込んでいる。せめて一度でいいから上がりたかったが、面白いように負け続けた。もう意地になっている。せめて一回上がるまでは、止められない。そういう気持ちだ。ネット麻雀で良かったと思う。
祈りが通じたのか、最終局、三、六、九ピンの多面待ちという理想形に仕上がった。だが、これが中々出ない。ツモる度に心中絶叫し、ついに声にまで漏れてしまった。
結局、ほとんど最後のツモ巡で、三ピンを持ってくることはできた。もうへとへとだ。
リーチのみだ。
2007年4月17日(火) くもり/雨
あじゃぱーボウリング。そして私は、何を書いているんだ一体。
凄い奴はいて、例えばそれは士郎正宗だ。
士郎正宗は漫画家だ。有名なものでは『攻殻機動隊』を描いている。何が凄いのかと言えば、上記『攻殻機動隊』の中に出てくる、人工知能(AI)達の描写が凄い。
『攻殻機動隊』は近未来を描いたSFだ。中に、コンピュータ上で人の仕事を支援してくれる、AIが登場する。例えば「タヌキを探せ」と命令すると、動物の狸から狸親父まで検索してくれるわけです。
こいつらは人格っぽいものを持ってるのだが、どいつもこいつも『構造解析』をしたくて堪らない。『構造解析』と聞いただけで、目を輝かせてやりたがる。その設定が凄い。
たくさんあるばらばらの物から、共通するものを引っ張り出す。それが知性だ。そのためにはまず、「構造」を「解析」しなければならない。至極まっとうなことだ。すげー。
『構造解析』と聞くだけで鼻の穴を広げてふんふんする、そういうものに私もなりたい。
2007年4月18日(水) 雨
独り言には気をつけよう
一人歩きをしている人物は面白い。そう思ったのは「ニーチェってすげー」と、自分が呟いていたことに気が付いた後だった。
歩いている最中は考えが回る。多分リズムがいいからだろう。で、色々考えていて、やっぱりニーチェってすごいなという所に辿り着いたわけだ。それが思わず口から零れた。
その瞬間はこんな状況だった。降り続く雨に、傘をさしていた。耳に突っ込んだイヤホンからは、たまが、「日曜の夜は外に出たくない♪死体ーにーなーりーたーくーなぃー♪」と歌っている。見事なハーモニーを聞かせてくれている。場所は小学校の横だ。細い道で、身体のすぐ隣を、しゃーという音を立てて車が通り過ぎていく。立ち止まり、辺りを見回しても、誰もいない。小学校からも、何の物音もしてこない。やけに冷たく感じる雨が、辺りを濡らすばかりだ。
歩いている時はだいたいこんなだ。変人でシュールだと気が付いた。君はどうだ。
2007年4月20日(金) 晴れ
読み耽る
日本全河川ルーツ大辞典(監修/池田末則・編著/村石利夫、竹書房)を読む。自分がこれまで下ってきた川を調べたりしていたが、中に気になる記述があった。
東京都、程久保川の河川名の由来は、古語の『ホド』にあるという。
『ホド』が何かということは、ここでは書かない。とてもではないが、書けない。気になる方は各自、調べてみて欲しい。程久保川は「ここの地形がそのような形をしているところからつけられた地名」だという。もう、一刻も早く地形図を買って来て、調べてみたい気持ちで一杯だ。
こうなってくると事で、普段何気なく使っている地名にどんな罠が隠されている、知れたものではない。『保土ヶ谷バイパス』とか、一体どうなるんだと言いたい。
程久保川についてさらに書くならば、「恐らく古くはホドという一字の集落名であったはず」とのことだ。その集落は、どうだ。
2007年4月22日(日) 晴れ/くもり
球楽
ロマンティックをもらった。
例によって、野郎四人でカラオケボックスになだれ込んだ。夕飯までの空いた時間を、ホゲーボエーとがなり立てようという寸法だ。
中の一人が懐かしのアニメソングを歌う。七つの玉を集めると竜神が出てきて、ギャルのパンティがもらえるアニメの、エンディングの曲だった。改めて聞くと、これが良い。
ベースラインがたまらなく格好良かった。跳ねるように連なる音に、思わず腰も動くというものだ。さり気なくチョッパーが使われている事にも気が付いた。当時はチョッパー奏法など言葉すら知らなかったわけで、大人になったものだ。それにしても、名曲だ。
野郎の野太い声ながら、十分にロマンティック成分の補給が完了する。不思議したくて、冒険したくてウズウズしながら、次の曲に突入した。
真心ブラザーズ「人間はもう終わりだ」、その曲は、どうだ。
2007年4月23日(月) くもり
趣味悪
左隣では大学三年生のテニスサークルに入っている男二人が、人生を達観している。
一頻り新学期の授業講評が続いていたが、段々と今年の予定の話題に移っていった。どうやら二人とも彼女がいないらしく、「前半は(彼女を作るのが)無理でしょう」と弱音を吐いている。その内、髪を茶色く染めた男が「これで毎日授業行って、就職して、まぁいいかっつって結婚していくわけだよ。俺の人生、見えたね」とぼやき始める。
その一つ隣の席では、まだ二十歳にはなっていない位の女の子四人が、恋愛話しに夢中になっているらしい。「らしい」というのは、会話の途中に中国語(韓国語?)が混じるからだ。「でも、○○君は、ホーリンチセンマヌ?」と聞いた時は、始め己の日本語能力を疑った。かと思えば右隣の歳の離れた女性二人は、さっきから一言も言葉を交わさない。
書き物をしようと入ったハンバーガー屋で、一向に筆は進まない。
2007年4月24日(火) くもり/雨
う〜ん、ほんのり気持ち悪いです
小雨が降りしきる中、傘をさして佇みながら、どうしても気になって見つめていた。
どうでもいい些細なことだ。しかし気になりだすと、否が応でも目に付いてしまう。どうやっても視線が離れない。いつも思うことだ。必ず佇みながら思うことだ。何故、遮断機の光と音は、ばらばらのタイミングなのだろうか。
鉄道と道路が交わる所に、事故が起こらないよう遮断機があるのは良く分かる。光を明滅させて注意を引くのももっともだ。同じ理由で、音を出すのも頷ける。ただこの光の明滅と音が鳴るタイミングは、ずれている。しかもずれ具合が微妙で、『良く見ていると段々ずれていくのが分かる』程度のずれだ。
タイミングが一緒だと事故が増えたりするのだろうか。あるいは何かもっと別の、予想も付かないような理由があるのかもしれない。
遮断機に遮られ電車が通過するまでの間、いつも感じる違和感だ。
2007年4月25日(水) 雨/くもり
趣味悪二。そしてうどん。
携帯電話の話し声が、あまり気にならない方だ。
昨今、電車内など公共の場において携帯電話の使用を禁止するのが、風潮だ。確かにペースメイカーに影響があるのは頂けないわけで妥当なことだとは思うが、純粋に会話をすることに対しては、小声であればいいと、個人的に思っている。あんなエンターテイメントは、滅多に聞けない。
「いや、でも最近、私、右目がほとんど見えなくなってきてまして・・・・・・」そう話していたのは、眼鏡を掛けた中年のおっさんだった。声の調子はあくまで明るく、「腰痛が酷くて」などと言っているのと同じレベルに聞こえる。しかし、内容はただ事ではない。思わず聞き入ってしまっていた。
個人情報保護法案などが成立する昨今、こんなにも『覗き欲』を満たしてくれる道具は、そうはない。本人が聞かれてもいいなら、良いと思う。禁止ばかりでは、楽はない。
2007年4月26日(木) 晴れ/雨
行きつけ
鳩を捕らえようかと思う。
朝、いつものコースを走っていると、目の前に鳩が飛び出してくる。道端でぽっぽこ朝飯を食っていた奴らが、急な接近に驚いて飛び立ったわけだ。しかし奴らは油断し過ぎだ。
飛び立ったのは良いが、着地が走っている足のすぐ先だった。踏み潰さないように、慌ててこちらが軌道修正しなければならない。「お前ら、捕って喰うぞ」思わず呟いた。
思い浮かべていたのは、以前行ったインドネシアの光景だ。屋台に毛が生えたような店で目の前に出てきたのは、頭のてっぺんから足の先まで、全身こんがりと仕上がった鳥の唐揚げだった。現地で知り合った色が黒いインドネシアの男が、にやりと笑って「ピジョン」と一言言うと、頭からばりばりと食べ始める。あれは美味かった。
多分一匹で、二、三日の延命にはなるだろう。もしもの時に備えて狩りの練習をしておこうかと考える、朝のランニングだ。
2007年4月29日(日) 晴れ
白い巨塔後
ひたすらに自転車を漕いだ。そこは坂だ。
もうとにかく先行車の後を追うことしか、やれることはない。さっきから頭の中では、ペダルの回転に合わせて、「ふにふにふにふにふにふにふに・・・・・・」と小さな子供が呟いている。フゥインという軽快な音を立てて、カップルを乗せたスポーツカーが横を通り抜けていく。
僅かな希望を込めて、一瞬だけ顔を上げ前を見た。希望は絶望に変わり、遥か遠くの坂の頂上は、さっきから全く近付いた気がしない。体育座りをして黒いパーカーのフードを目深に被った子供の、「ふにふにふにふにふにふにふに・・・・・・」という声は、段々と大きくなってきている。
先行する友人は、気合を入れるためか、何かを怒鳴っているようだ。「ちくしょー、どっちなんだぁーー!」どっからどう見ても一本道の坂の途中で、友人は叫んでいた。奴も闘っている。
2007年4月30日(月) 晴れ
へとへと
ビジネスホテルに泊まったついでに、お尻洗浄を初体験してみる。
強烈な朝日で目覚め、そこが海の近くだったことを思い出した。朝のお勤めを済ましてふと横を見ると、てめーの安借り部屋のボロトイレにはとてもではないが付いていない、お尻洗浄機操作パネルが目に入る。
「お尻だって洗って欲しい」などといわれても、「馬鹿な。俺のケツはそんな軟弱なことを考えているはずがない」と一笑に付し続けてきた人生だった。だがそんな主張は、間違いなのではないか。実際の尻に聞きもせず、独り善がりをしていたのではないか。ふと、そんな思いが頭を過ぎった。「おい、ケツ、お前実は洗って欲しかったんじゃないか」そう聞いてみる。操作パネルに手が伸びた。
温水が、ケツドメ付近を直撃する。もぉ何というか、「ぅおうふ!」としか言えない。便座の上で、身をくねらせる男が一人だ。
「止」ボタンは、どこだ。
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