2007年10月2日Tue. くもり
全力おじさん

 実は人は、今表に出しているものだけではなく、他にも無数の人格を持っているという。今自分の人格だと思っているものは氷山の一角で、無意識の中には想像もしなかったような性格があるという。
「二人乗りをしていたんですよ、刑事さん」
「何だって!?どういうことかね?」
「現場に残された二人分の足跡、しかし自転車の轍は一つ、その答えは、犯人が自転車に二人乗りをしていたということです!!」
「おお!!なるほど、そう考えれば全て説明が付く……」
 自転車で全力疾走中に、突然脳内劇場が始まる。後ろから原チャリ、前に客を拾いに行くタクシーという切羽詰った状況下で、強制的にヘボ推理を聞かされる。頼むから、どっか別の所でやってくれと言いたい。
 こんな奴が自分の人格じゃなくて良かったと、安堵する。反面、「こいつ、時々出てきてるか……?」とも思うわけです。

2007年10月4日Thu. 晴れ
安定

 最近、コーラ(ペプシの方)ばかりを飲んでいる。自分でもどうかと思うような量だ。三百五十ミリ缶を毎日二本ずつ、きっちり飲む。気を付けなければならない。細心の注意を払ってもまだ足りない。「コーラ君」そう呼ばれることだけは、何としてでも避けなければと思う。
 毎日一時間の距離を自転車で往復していることがばれた時、付いた渾名は「チャリンカー」だった。また自転車旅行の折、山道に短パンとサンダルといういでたちで挑戦したら、「バカンス」と名付けられてもいる。
 人は他人の特徴を渾名にする。それはある意味避けがたい事態だが、その渾名が本人の本意に沿うかはまた、別の話しになる。
 「コーラ君」は嫌だ。コーラを良く飲むからって「コーラ君」と呼ばれた日には、まるで全存在がコーラのためのようだ。
 しかし「コーラ野郎」なら、ちょっと呼ばれて見たい気もするのは、どういうことか。

2007年10月8日Mon. くもり
書き所巡り

 鞄の中に、般若心経が入っていることを発見した。だからどうしたという話しではない。だが、鞄の中に般若心経が入っている。
 叔父の一周忌を行ったのは、二日前だ。親戚十五人程が集まって、寺で供養をし、宴席を設けた。その折、寺で配られた読経用の小冊子が、鞄の中に入れっ放しになっていた。
 気が付いたのは、ハンバーガーのチェーン店の中だ。中学生がはしゃぎ回り、隣りの席では大学生と思しき男が、提出用のレポートらしきものを前にしてさっきから頭を抱えている。例えばここで般若心経を取り出してみたって、いいわけだ。
 般若心経を取り出す。写経を始めてもいい。これだけ五月蝿いのだから、小声だったら読経をしたって構うものか。それは自由だ。鞄の中に般若心経があるということは、その自由を手にしているということだ。
 そうやって鞄に手を突っ込んで入る内に、中学生は去り、後には静けさだけが残る。

2007年10月31日Wed. 晴れ
提出

 小沢健二の名盤『LIFE』は不思議なアルバムだ。買っても買ってもなくなってしまう。時々、名曲『 いちょう並木のセレナーデ』などを無性に聞きたくなり探すが、ない。というわけで、都合三枚目を買おうかどうしようか悩んでいる。同じ音楽CDを三枚も買うのは如何なものかと思うが、しょうがない。
 CD三枚といえば、結構な金額だ。引越しのアルバイトの日給位にはなる。もちろん、全額が小沢健二の懐に入るわけではないが、気分としては彼に日給を払っているようだ。小沢健二に日給か。もしそうなら、一日、彼に、何をしてもらえばよいだろうか。
 一番妥当なのは、やはり「生で音楽を聞かせてもらう」だ。しかしよく考えれば、マンツーマンでライブを聞かせてもらうという状況は、嫌だ。怖い。ノれない気がする。では何ならいいのか。掃除洗濯か。交通量調査か。
 結局、「引越しを手伝ってもらう」が一番妥当な気がしてくる。さ、仕事しよ。




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