2008年6月3日(火) ?
不確定性
サトリという妖怪がいる。山中で夜を明かしている猟師なんかの前に現れ、「お前今『妖怪か?』と思っただろう」とか、「その銃で撃とうしているな」などと、こちらの心中を当ててくる。うざいことこの上ない。あらん限りエッチな想像を膨らまし、「お前今、×××を△△に○○しようと・・・・・・、きゃー、エッチー!」とか言わせてみたい。
例えばこのサトリを人工的に作るとする。脳の活動部位と思考の関係を調べ上げ、脳内の電気信号か何かを観測する。理論的には出来そうだ。しかし、この人工サトリは怖くない。「アナタハイマ『しごとのあとはやっぱりばどだな』トカンガエテイマスネ」かなんか言われても、うるせーこのロボット風情が、と思うのが落ちだ。エッチな事を言わせたって、恥ずかしくなるのはこっちだ。
この違いは何か考えている。そこに介在する何かについて考えている。やはり「エッチな事を言わせてみたいかどうか」が問題だ。
2008年6月7日(土) 晴れ
「終点までにあの座席に人が座ったら、死のう」バスの中でそう決めた。何故なら、この時間帯のこの路線はガラ空きなのを知っていたからだ。そして次のバス停で、意外に人が乗ってくる。
時々、ほぼ間違いなく成功する事例に、自分の中で、命を賭ける。一メートルも離れていないゴミ箱に紙屑を投げる時、外れたら死だと決意する。そういった類だ。
意味はない。ちょっとした緊張が欲しいだけかもしれない。それは賭けですらないのかもしれない。何せほぼ間違いなく成功すると分かっているからだ。しかし今回は、たくさん人が乗ってきた。
どうやら近所で祭りがあったらしい。
一人のおばちゃんが件の座席の前で逡巡した後、座り易い横長の優先席に向かった。
ありがとうおばちゃんと言いたい。貴女は今日、一人の命を救いました。
人生は予想外だと、悟る。
2008年6月12日(木)?
久方ぶりに
マンション名における「ヴ」について考える事は、既に遅きに失した感がある。我々はあまりに「ヴ」について無関心であり過ぎた。頓着をしなかった。今、大変なことになっている。
普段我々は「ヴ」などと言わない。せいぜいが「ヴォーカル」位なもので、それにしたって、音楽の話しの途中に突然下唇を震わせて「あのバンドのヴォーカルはさぁ」なんて言う奴がいたら、俺はそいつをひっぱたくよ。
通常我々は「ヴ」など使わない。ところが唯一、この常識を覆すのが、マンションの名前だ。
「ヴェルドミール・ベップ」「ヴィラ・ド・イチカワ」「ヴェルメゾン・ハチノヘ」一体そこは何処なんだ。そう言わざるをえない状況に、我々はすでに陥っている。
交番の前を通りかかる。中から声が聞こえる。「ヴァンデミオン・イズは何処ですか?」何度も言うが、俺はそいつをひっぱたくよ。
2008年6月22日(日) 雨/くもり
ぎりぎりで間に合う
銀行のATMの上に、紙片が落ちていた。利用明細書のようなもので、口座残高と引き落とし金額が書いてある。前の人の忘れ物だろう。だがATMコーナーは入った時からがらんとしていて、人の気配はなかった。誰が置いていったのか、見当はつかない。何の気なしに手に取って眺めると、預金の桁数がおかしな事になっている。
ゥン千万という単位だった。二回桁数を数え直したので、間違いはないと思う。いや、世の中には凄い人がいるもんだと感心して眺めていると、引き落とし金額が千円だ。
日曜日の午前中、ゥン千万円の預金から百五円の手数料を払って千円を引き落とすのは、一体どんな事情なのか。
外では雨が降り始めている。これからコンタクトレンズを買って、その足でフットサルをやりに行く予定だ。
しばらく握り締めていた紙片を元の場所に戻し、傘を差して外に出た。
2008年10月24日(金) 晴れ
人間工学
券売機については、いずれ一言、言っておかないといけないとは思っていた。その矢先、また閉まっている。駅の切符の券売機の、小銭を入れる投入口がまた閉まっている。
もうこれは絶対、人間工学の粋を結集して人を不快にしているとしか思えない。最近の券売機は先に行き先を指定してからお金を投入出来る。それはいいが、その「切符を指定してからお金を入れるまでの時間」が微妙過ぎる。目的地を指定し、金額が表示され、鞄から財布を出して「さぁいざお金を入れるぞ」というタイミングで必ず投入口が締め切られる。人をおちょくっているとしか思えない。何故に後二秒、待てないのか。裏に駅員がいて、「それ!今だ!奴が小銭を入れるぞ!閉めろ閉めろ!!」と大騒ぎをしているのではないか。そう思う。疑りは、確信に近い。
で首尾よく何とかお金を入れて、出て来た五十円のお釣りが十円五枚だったりする。もぉ「はんにゃー」と叫んで蹴ってやろうか。
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